かつての特捜幹部は、古巣が描く事件の構図を、佐賀被告が「故意の改竄とは聞いていない」と、淡々と否定したことが明らかになった。 大阪地検特捜部の押収資料改竄・犯人隠避事件の公判で16日から、元副部長、佐賀元明被告(50)の被告人質問が始まり、検察側の主張では、佐賀被告はデータ改竄を前田恒彦受刑者(44)から直接告白され、元特捜部長の大坪弘道被告(58)に報告した中継ぎ役で、私がキーパーソン」と、本人が苦笑まじりに語ったように、佐賀被告の認識が公判の帰趨を左右するとされ、検察と元検察の対決は最大のヤマ場を迎えたことが判明した。 佐賀被告は濃紺のスーツ姿で入廷し、先に着席していた大坪被告に会釈後、落ち着いた様子で証言台に立つと、冒頭で「前田受刑者から故意の改竄だと報告を受けた」とする検察側の構図を否定し、続いて特捜部の所管事項などを問われ、よどみなく答えていった。 前田受刑者との関係については、奈良県立医大の汚職事件で捜査をともにしたことを説明し、「前田も若かったのか、意味の分からない供述調書を作成してきたので叱った」と笑いをまじえて振り返った。 古巣の検察から起訴されて、刑事被告人になっても視点はそのままで、公判を前にしても「裁判は証拠次第」と開き直っている。 24日の第14回公判まで、4回にわたり行われる被告人質問では、カギを握るのは、佐賀被告が「職務を語るうえで一番詳細な資料」と位置付ける執務記録や当時のメモで、検察側・弁護側双方にとって有利にも不利にも解釈できる内容があるが、最大の争点である前田受刑者からの「改竄の告白」について明確な記載はない。 被告人質問ではこうした客観証拠を踏まえ、「私は私の記憶を述べる」という。
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