軽乗用車にはねられた富山市の女性(73)が、市内の3病院に受け入れを断られ、搬送先の高岡市内の病院で死亡した問題で、同県が2日、富山市内の5総合病院の院長らを集めて緊急の連絡会議を開いたことを明らかにした。 「たらい回し」を防ぐため、県は今年4月から、新しい受け入れ基準の運用を開始したばかりだったが、「基準が絵に描いた餅になっている」などと厳しい声も相次ぎ、医師不足や、基準の周知不足などの課題が浮き彫りとなった。 受け入れを拒否したのは、輪番制でこの日夜間救急を担当していた富山市民病院と、県立中央、富山大付属の両病院で、理由について「すでに救急患者を5人受け入れていた」(富山市民)、「整形外科の専門医が不在だった」(県立中央)、「医師が手術直後で、ベッドも満床だった」(富大付属)などと説明している。 しかし、新基準では、「照会回数4回以上」か「医療機関への連絡開始から30分以上経過」した場合、富山医療圏内では、重篤患者向けの3次救急医療機関の県立中央病院が受け入れるか、搬送先を調整することになっているため、出席者から「受け入れられない場合があるから、3次のシステム(新基準)を作ったはず。それが機能しなかったのは、周知不足など病院にも責任がある」などと、県立中央病院へ批判の声が出た。 県立中央病院の飯田博行院長は「3次病院であっても輪番日以外に、当直以外の多くの医師を院内にとどめておくだけの人的余裕はない。今回、輪番日でないと手薄になってしまう弱点が出たのではないか」と釈明したうえで、「救急医療の『最後の砦』として、早急にスタッフを招集するなど、連絡態勢を整えたい」と述べた。 県消防課によると、女性は先月30日午後7時25分頃、富山市の県道を自転車で横断中に軽乗用車にはねられて、救急隊の現場到着時は意識があったが、富山市民病院のほか、県立中央、富山大付属の両病院も相次いで拒否し、開始から約20分後の6回目の照会で、隣の高岡医療圏の厚生連高岡病院への受け入れが決まり、女性は搬送されたが、事故から約3時間後に死亡したという。
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