東日本大震災での自衛隊の派遣態勢をめぐり、菅直人首相が唐突に増派人数を打ち出している問題で、被害の甚大さが日を増すごとに明らかになり、人命救助が時間との戦いであることも事実で、増派自体は妥当だが、首相は政治主導を示そうとして、防衛省と十分に相談することなく「自らが数字を指示することにこだわりすぎている」(防衛省幹部)ため、防衛省・自衛隊に混乱を与えていると批判が出ている。 北沢俊美防衛相は13日午前、記者団に「12日夜までに6万5千人態勢となったが、一両日中に10万人態勢を整える」と述べたが、同日夜になり、防衛省は「一両日中」としたはずの10万人態勢の完了時期を「1週間をメドに」と後退させた。 朝令暮改とはこのことで、「自衛隊の運用に通じていない」(自衛隊幹部)ことを露呈した形になった。 首相は12日には自衛隊の派遣規模を2万人から5万人に拡大する考えを表明したが、わずか1日で倍増に踏み切ったもので、10万人態勢を打ち出すにあたり、首相官邸と防衛省が綿密に打ち合わせをした形跡はみられない。 首相が12日夜の記者会見で「さらなる動員を検討してもらっている」と明言すると、直前に首相は北沢氏に増派検討を指示していたが、大半の幹部にとっては「寝耳に水」の発言だったため、防衛省内には驚きが広がった。 10万人態勢の根拠となったのは、首都直下地震への対処計画とみられ、計画での最大派遣態勢は11万人で、防衛省幹部は「首相から『出せるだけ出せ』と指示され、首都直下地震対処を参考に10万人という数字が浮上した」と明かす。 防衛省幹部によると、5万人への増員すら官邸から防衛省に事前に打診がなかったとしており、首相の指示を受け防衛省はあわてて要員計画の見直しに入った。 混乱はすぐにあらわになり、防衛省は12日午後4時15分から1時間あまり、5回目となる省内の災害対策本部を開き、終了後1時間以内に記者説明が行われるのが通例だが、このときは約2時間半後の午後7時45分までずれ込んだ。 しかも、さらに首相が10万人へと増強を指示したことで、再び計画の練り直しが必要となり、度重なる変更による混乱が、初めて国内災害で本格的な救援活動をする自衛隊と米軍の運用計画の策定に支障を来した可能性も指摘されている。 防衛省は12日朝は北海道の陸自要員約900人などを米艦艇で輸送してもらうことで「調整中」としていたが、12日夜になり「白紙」とした。(編注:そのうち、「自衛隊員2億人派遣」の話が出るかもしれない)
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