生活保護受給者に扶養可能な親族がいるのに、生活費の負担額が折り合わない場合に、自治体が活用できる家庭裁判所への申し立てについて、新聞社が全国の主要74区市に取材したところ、昨年度はゼロだったことが明らかになった。 人気芸能人の扶養問題や受給者の急増を受け、国は司法の積極活用を打ち出したものの、現場では困惑や反発が目立ち、実効性のある手段が見あたらないのが現状で、5月25日、小宮山厚生労働相は国会答弁の中で、家裁の手続きのマニュアルやモデルケースを示して、自治体に活用を促すと明言し、「扶養可能な義務者には、必要に応じて保護費の返還を求める」と強い姿勢を示した。 受給者は昨年7月以降、過去最多を更新し続け、210万人に迫る勢いで、事業費が3兆7000億円にも膨張した現状への危機感が背景にある。 申し立てについて、新聞社が道府県庁所在地(46市)とこれ以外の政令市(5市)、東京23区に取材したところ、昨年度に家裁を活用したケースはゼロで、札幌市や静岡市など「過去に一度も行ったことがない」と答えた自治体までもあったという。
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