セール商品の値札を付け替えて実際より安く購入した詐欺の疑いで、警視庁愛宕署は7日までに神奈川県警川崎署の会計課職員・石塚篤太郎容疑者(58)=川崎市=を逮捕した。ファッションブランド「ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)」のベストが2万1000円で売られていたが、石塚容疑者は別の商品の8400円の値札と付け替えて購入。しかし、付け替える瞬間を警備員に目撃されており、立ち去ろうとするところを捕まった。 会計担当だけに、脳内のそろばんが瞬時に“差額”をはじき出したのかもしれない。しかし、わずか1万2600円をごまかそうとしたばかりに、警察職員は“同業者”の手で連行された。 愛宕署によると、石塚容疑者は5日午前9時40分ごろ、東京都港区の東京産業貿易会館で開かれた「イッセイミヤケ」のファミリーセール会場で、2万1000円のベストの値札を別の8400円の半袖シャツの値札と付け替えて購入した疑いで現行犯逮捕された。 石塚容疑者はセール開始時刻の9時30分ごろに来場。売り場を物色し、ベストに付いていた値札のプラスチック製リングを何らかの方法で切断すると、自ら持参したリングにシャツの8400円の値札を付けて入れ替えた。 ところが、容疑者の様子を不審に思った警備員が値札の付け替えを目撃。容疑者が午前10時10分ごろにレジでカード決済で購入した後、エレベーターに乗り込む際に「わかってますよね」と声を掛けると「間違いありません」と素直に認めたため、通報で駆け付けた警察官に引き渡した。「悪いこととは分かっていたが、魔が差してしまった」などと供述している。 捜査関係者によると、容疑者が盗もうとしたベストは、黒とグレーと茶を混ぜたようなシックな色合いで、スーツとシャツの間に着る「ジレ」というタイプ。イッセイミヤケの担当者によると、値引率は20〜40%だったようで、定価では最大3万5000円の高級品だった。担当者は「ブランド名が報じられることで非常に困惑しております」と話している。 愛宕署は、石塚容疑者に余罪がある可能性も否定できないとして、家宅捜索を含め捜査を続ける方針。同容疑者が勤務する神奈川県警の監察官室は「警視庁の捜査結果を踏まえ、厳正に対処します」とコメントしている。
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