来春から使う中学公民の教科書採択をめぐる沖縄県の八重山採択地区(石垣市、与那国町、竹富町)の混乱が、着地点の見えない状況が続いており、「育鵬社」を採択した同地区協議会の決定が、法的根拠のない協議で逆転不採択とされたものの、文部科学省がその決定を無効だとして県教委を指導してから約1カ月が経過しても、県教委は何1つ事態打開の手だてを取っていない状態となっている。 県教委の不可解な対応からは、地元メディアなどに迎合する形で育鵬社採択を回避させたいとの思惑が透けて見えられている。 同県の大城浩教育長は9月28日の県議会で、育鵬社を逆転不採択とした9月8日の3市町の教育委員全員による協議の有効性を「8日の採択決議こそが沖縄県としては有効だ」と改めて強調した。 しかし、この協議は石垣市と与那国町の合意を得ないまま多数決で強引に「有効」とされたもので、両市町の教育長から「無効」を訴える文書を受けた文科省は協議の有効性を否定し、8月に八重山採択地区協議会が規約に従って選定した育鵬社を竹富町教委に採択させるよう、9月15日に県教委に求めた。 しかし、県教委はこれに従わず、翌16日に改めて3市町に再協議を求めていくことを会見で表明した。 県教委はこの際、再協議の時期について「速やかに」と明言したが、実際には3教委に文書を送付しただけで、それぞれの担当者に直接連絡を取って再協議を促すなどの打開策も取っておらず、1カ月も「放置」した揚げ句、8日の協議の問題を蒸し返した形になる。 県教委は16日の会見で、教科書の採択権を各市町村教委に与えた地方教育行政法(地教行法)と、共同採択地区内の各教委で同一の教科書を採択するよう求めた教科書無償措置法について、「どちらが優先されるものではない」と強調し、この法解釈を、文科省の指導に従わない根拠に挙げたが、文科省は10月7日に閣議決定した答弁書で、「無償措置法は採択地区内で協議して同一の教科書を採択しなければならないとして、地教行法が規定する採択権の行使について特別の定めをしている」と述べ、無償措置法が地教行法に優先されるとの見解を示し、県教委の法解釈を明確に否定している。 さらに県教委は石垣、与那国両教育長が9月8日の協議無効を訴えた文書について、教委の議決を経ておらず「不適切」とする一方、育鵬社に反対する3教委の教育委員長が連名で協議有効を訴えた文書については、文科省の判断が変わる可能性があるとの期待感を示していた。 しかし、文科省は同じ答弁書で、両教育長の文書を「教育長の公印が押され、両教委による公文書と認められる」とし、教育委員長連名の文書については、石垣と与那国両委員長の公印が省略され、各教委の決議を得ていないとして「石垣、与那国両教委による公文書とは認められない」との見解を示した。
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