三重県四日市市のスーパーで04年2月、窃盗未遂容疑で誤って現行犯逮捕された男性(当時68歳)が死亡したのは、警官に押さえつけられたからだとして、遺族が県に約5700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9日、名古屋高裁であり、高田健一裁判長(長門栄吉裁判長代読)は「警官の制圧行為と男性の死亡には因果関係がある」として、因果関係を否定した1審津地裁判決を変更し、賠償額も880万円から約3640万円に増額する判決を言い渡したことが明らかになった。 1審津地裁判決は、警官の制圧行為の違法性は認定したが、死亡した男性が居合わせた女性に「泥棒」と叫ばれたり、他の客に取り押さえられた際のストレスと、警官の制圧によるストレスを同程度とし、「どちらの行為で死亡したか分からない」として因果関係は不明としていた。 2審判決は警官の制圧について1審同様「胸や腹に強い力がかかり約20分続いた」と認定して、客の取り押さえ時間を1審より2分長い5分とした上で、「(体重94キロの)警官に制圧されたストレスの方がはるかに大きかった」とした。 男性の遺族の代理人弁護士は「主張はほぼ認められた。県は上告せず遺族に陳謝し、再発防止に努めてほしい」と話し、男性の妻(71)は「事件の真相を明らかにして夫の名誉を回復するという妻の責務を果たし、夫も少しは安堵しているのではないか」とのコメントを発表した。 県警警務部・浜口昇首席監察官は「今後の対応については判決内容を検討した上で決めたい」とのコメントを出した。 男性の窃盗未遂容疑については、津地検が「無実」と認定し、遺族に1万2500円の補償金を支払っている。
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