経済産業省原子力安全・保安院が2日、東日本大震災当日、東京電力福島第1原発1〜3号機で全電源喪失などを想定し炉心溶融などを予測した「緊急時対策支援システム(ERSS)」の解析結果を、約半年たって公表したが、2〜3号機の予測を官邸に送信したが活用されず、1号機は送信もしていなかったことが明らかになった。 保安院の情報管理のずさんさが問われることが必至だ。 保安院によるとERSSを開発した原子力安全基盤機構(JNES)が3月11日、保安院の依頼でERSSを起動し、同原発で全電源が断たれた事態を想定したパターンを使って、1〜3号機の原子炉内の水位や圧力、温度が今後どう推移するかの予測結果を出した。 2号機のデータは11日午後9時半ごろ、JNESから保安院に届き、保安院の職員はデータを基に「22時50分 炉心露出 24時50分 燃料溶融」など予想される展開を文章にして、同日午後10時45分ごろと12日午前0時過ぎ、危機管理センターに常駐していた保安院職員を通じ内閣府の職員に手渡した。 3号機については13日午前6時半ごろに届いたデータを同様の方法で約20分後に官邸に届けたが、これらは周辺住民の避難指示などに活用されなかった。 保安院の森山善範・原子力災害対策監は2日の会見で「事実に基づいたデータではないので活用を思い至らなかった」と釈明した。 また、保安院は1号機の予測から導いた放射性物質の推定放出量を基に「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」で拡散予測を実施していたが、すぐには公表せず、避難指示などにも活用しなかった。 保安院はこれまで「全電源喪失でSPEEDIが機能しなかった」と嘘の説明をしていた。
↧