捜査協力者を使って神奈川県警が摘発した風営法違反事件をめぐり、横浜地裁小田原支部が10日、協力者の供述の信用性を退け、客引きをしたとして同法違反罪に問われたキャバクラ店従業員の男性(30)に無罪判決を言い渡したことが明らかになった。 西野光子裁判官は「(協力者が)報酬を得た経緯があり、供述を慎重に検討する必要がある」と述べ、「供述の信用性に問題があると言わざるを得ない」と指摘し、県警の捜査に警鐘を鳴らした。 事件を巡っては、県警が捜査協力名目で事前に2〜3万円支払った協力者の証言を基に、2010年3月、キャバクラ店従業員を逮捕したが、協力者の供述調書には、本人たちがたまたまその場を通りかかって客引きされたように記述されていた。 裁判には捜査に当たった県警の警部補も証人として出廷し、協力者を隠した理由について「背後に暴力団関係者がいる可能性もあり、協力者に後難の恐れがあった」と説明した。 一方で、協力者の供述調書に「(男性が)しつこく前に立ちはだかって店の案内をしてきた」などと、客観的事実と異なる記載があったことも判明し、検察側も捜査の不備を認めた。 県警が捜査協力者を使う背景には、違法な客引きが後を絶たず、捜査員だけによる摘発には限界があると判断したことがあるが、客引きなど比較的軽微な事件は、裁判所の略式命令で終わるケースがほとんどという。 捜査のチェック機能が働きにくいだけに、協力者を使った捜査のあり方が改めて問われている。
↧