2年前に大阪市の路上で警察に保護された重い認知症の男性が、氏名や住所などが不明のまま仮の名前を付けられ介護施設で暮らしていた問題で、男性の身元が4月27日、兵庫県の74歳と判明した。 家族と対面を果たしたが、家族により兵庫県警に行方不明者届が出されていたことも判明し、見つかった氏名不明者との照合作業で何らかのミスがあり、長期間身元が判明しなかった可能性があるとして兵庫県警が調査を始めた。 男性は2012年3月11日朝、大阪市内の住宅街で保護され、認知症で氏名や住所を話せず、市は保護された場所にちなんだ名字に「太郎」という仮の名前を付けて、年齢を70歳(当時)と推定して仮の生年月日も設けた。 新聞が4月19日朝刊で男性の存在を報じて身元判明につながる情報提供を求め、同日夜にはNHKもニュースで放送して、家族はこうした報道で男性が保護されていることを知り、自治体や警察に申し出た。 27日は、警察の立ち会いの下、男性の成年後見人を務める山内鉄夫司法書士が家族と面会し、家族が持参した写真などから本人に間違いないことを確認したもので、今後については山内後見人と家族が話し合い、男性の体調などを見極めながら方針を決めるという。 兵庫県警によると、男性は12年3月8日午後7時25分ごろ、県内の路上で一緒にいた家族が目を離したすきに行方不明になり、家族は同8時15分ごろ、最寄りの警察署に届け出た。 警察署は消防や福祉施設、タクシー会社などにファクスで行方不明者の情報を送り発見の協力を求める「SOSネットワーク」も使って捜したが見つからなかった。 大阪府警が男性を保護したのは3日後で、最初に行方不明になった場所から数キロしか離れていない場所だった。 府警によると、保護した人の名前が分からない場合は通常、全国の警察本部に写真を添付した「迷い人照会書」を送り、該当する行方不明者届がないか確認を依頼することになっており、今回のケースも兵庫県警を含む全国の警察本部に照会したという。 兵庫県警が作成した行方不明者届には家族が提供した男性の写真が添付されており、同県警が迷い人照会書と行方不明者届を正しく突き合わせられていればその時点で身元が判明した可能性が高く、何らかの理由でこの照合作業ができていなかったとみられている。
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