高機能自閉症を抱える関東地方の当時小学6年の男児(12)が3月、ほぼ全教科の成績を斜線(評価なし)とする3学期の通知表を渡されていたことが明らかになった。 男児はクラスの授業に出られなくなっていたが、ほぼ毎日登校しており、発達障害児らを支援する「通級指導教室」(通級)は週3時間しかなく、保健室や図書室で過ごしていた。 専門家は「学習支援が不十分で、通知表の評価が全くできないほど放置していたのは問題」と批判している。 母親(41)によると、男児は集団行動や字を書くのが苦手な一方で、知能指数は高く、年500冊以上の本を読んでいる。 通級では算数や図工、集団行動などを学び、通知表は所見欄に「毎日少しでも教室で過ごそうと取り組んだ3学期でした」などと記されたが、国語以外の学科評価は斜線だったため、母親は「存在を否定されたようでショックだった」と話している。 校長は「国語だけ評価材料がそろった」と釈明し、新聞社に対し、「取材は受けられない」としたが、地元教委には「成績をつけない場合は事前に保護者に説明する方針だが、対応が不十分だったなら申し訳ない」と述べたという。 通級は国の規定で週8時間まで通えるが、男児は週3時間に設定されて、卒業まで変わらなかったことが判明しており、口頭ならテストを受けられたが、対応はなかったという。 文部科学省特別支援教育課は「一般的に保健室での学習や通級による指導も参考に、評価はできる。子どもの状態に応じた支援を検討してほしい」と話している。 東京都自閉症協会の尾崎ミオ副理事長は「同様の例は他にも聞いたことがある。学ぶ権利を奪っている」と話しており、特別支援教育に詳しい東京学芸大の高橋智教授は「教育の放棄だ。子どもは最大限の多様な支援を受ける権利があり、これを保障するのが特別支援教育。理念が学校に浸透していない典型例だ」と批判している。
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