名古屋市営バス鳴尾営業所(南区)が、2010年度に起きた乗客の車内転倒などの人身事故3件について、市バス側の自賠責や任意保険で治療費を支出せず、負傷した乗客が自分の医療保険で治療していたことが明らかになった。 警察には届けたが、乗客の保険を使ったため営業所は「事故」として扱っておらず、市交通局が経緯を調べている。 新聞社が情報公開請求で開示させた2010年度の事故報告書によると、名古屋市南区で今年2月、鳴尾営業所の市バスがブレーキをかけた際、乗客2人が転倒して打撲の負傷をし、報告書には「当方過失」と市バス側の過失と明記し、警察署にも届けた。 通常は市バス側が加入する保険で対応するケースだが、報告書には「(乗客の)怪我の程度が軽微であったため、ご自分の健康保険や老人医療で受診される事を約束され、お許しをいただいた」と手書きで追記されていて、他の2件も同様の処理がされていた。 しかし、交通局のある関係者は「市の保険を使うと事故としてカウントされるので、運転手がポケットマネーで治療費を立て替えるケースはよくある」と証言している。 鳴尾営業所の天野隆功所長は「交通事故の被害は加害者側が負担するもので、社会常識からして(3件の処理は)おかしい。(内規違反の)ポケットマネーで立て替えたかどうかも含めて調べている」と述べ、交通局自動車運転課の赤石哲治課長は「どう処理したかを把握しておらず、適切かどうかもわからない」と話している。 名古屋市営バスでは、物損事故を警察や相手方に届けなかったことが判明したため、愛知県警が各営業所を道交法違反容疑で家宅捜索している。
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